デジタル表現

(メディア応用研究室)

  • 感性工学
  • ゲームUI/UXデザイン

感性工学を応用したデジタルコンテンツの体験価値向上に関する研究

デジタルコンテンツやWebアプリケーションを開発する上では、性能や精度といった機能性に関わる設計要素のほかに、コンピュータとそれを操作するユーザの間に介在するインタフェース(UI)の使い易さや、その使用体験(UX)を通じた感性的な満足感に関わる設計要素も重要となります。ビデオゲームであれば、美麗な3DCGはゲームの世界観を表現する上でとても大切ですが、その世界との触れ合いはUIが支えています。例えば、ゲームユーザの視点となるCGカメラの制御システムの作り込みが甘いと映像酔いの原因になる一方で、カメラの動きを制限し過ぎると今度は迫力感が欠けてしまいます。このような問題を解決するために、我々はヒトのあいまいな感性や知覚情報処理の特徴を観測し、データ解析の結果から科学的再現性がある法則を導き出してUI/UXの向上に応用しようとする感性工学(Kansei / Affective Engineering)に関する研究に取り組んでいます。

教員紹介

井ノ上 寛人助教

Hiroto INOUE

2010年、東京電機大学大学院 理工学研究科 修了。2012年、宇都宮大学大学院 工学研究科博士後期課程 早期修了、博士(工学)取得。同年、日本学術振興会 特別研究員PD。2013年、公立大学法人首都大学東京の専門職大学院(産業技術大学院大学)の助教として、デザイン解析論やPBL(Project Based Learning)型科目などを担当。2016年より現職。2015〜2020年、電子情報通信学会 画像工学研究会 専門委員。2021年から、日本感性工学会 評議員。最近の趣味は、3DCGビデオゲームのカメラワーク(視点制御システム)を研究するためにはじめた某ハンティングアクションゲーム。モンスターの狩り方を学生から教えてもらう日々。

発表業績を見る

研究事例

ビデオゲームのUI/UXに関する研究

三人称視点の3DCGビデオゲームでは、一般に、ユーザはアバタと呼ばれるCGキャラクタと、ユーザの視点となるCGカメラを操作できる仕様になっています。ゲームの世界には敵キャラクタがおり、敵と衝突してアバタやカメラが弾き飛ばされると、ユーザは敵や自分の位置を見失ってしまうことがあります。この問題を解決するために、本研究では、映画の撮影技法である想定線(180-Degree Rule)の概念とワイヤーワークの動きをビデオゲームに応用し、アバタが敵に弾き飛ばされた際に自動で高速に旋回する視点制御システムを提案しました。評価実験の結果から、提案手法は迫力感の向上と映像酔いの軽減を両立できる可能性が示されています。このほかに、眼精疲労を軽減するレンダリング手法の研究や、ヒットストップ(Hit-Stop / Hit-Lag)の最適時間の解明に関する研究に取り組んでいます。

研究室の生活

大学の研究室は、目標を定めて夢に近づくために研鑽する場所だと考えています。私には将来実現したい夢が幾つかあるのですが、そのうちの一つが「いつかは大学の先生になりたい」という目標でした。なので、私は夢の一つを実現したということになります。人生の分岐点は、指導教員の先生が大学院への進学を熱心に勧めて下さったことでした。本当に感謝しております。そこで、この夢を発展させて、「講義や研究を通じて学生に夢を見つけてもらい、それを一緒に実現する」ことを次の目標としました。
私の専門は、一級の感性を持つデザイナやクリエータが直感的に実践してきた領域に科学的再現性がある手法の導入を目指す「感性工学」という学問分野で、科研費などでは「カメラが高速で移動する3DCGゲームの眼精疲労を防止するレンダリング手法の確立」といった研究に取り組んできました。本研究に取り組んだ学生は大手ゲームメーカーのプログラマ職として働くことになり、「ゲーム会社に勤めたいという子どもの頃からの夢が叶ってとても嬉しい」と報告してくれました。そのときの笑顔が印象的で、よく覚えています。また、数学の勉強が好きでテキストマイニングに関する研究に取り組み、大手IT企業の技術企画職に就いた学生は、「勉強するとお給料がもらえるという、夢のような生活を送っています」と報告してくれました。私自身が研究職に就いたときに同じようなことを言った記憶があり、感慨深いものがあります。学生の研究指導を受け持つようになってから5年程が経ちましたが、新しい夢も少しずつ実現できそうに思えてきました。ぜひ一緒に充実した研究室での生活を送りましょう。

先輩の声

オープンキャンパスで井ノ上先生の模擬講義を拝聴し、デザインや心理といった感性的な領域で技術を活かすという感性工学に強い興味を抱いたため、東京電機大学への進学を決めました。念願叶って配属が決定してからは、先生や研究室の仲間と沢山議論を交わしながら切磋琢磨する毎日を送っています。先生は学生の興味に応じて様々な挑戦の機会を下さります。夢や目標に対して足りない部分を細分化し、経験を積む機会を下さるため、当初は絶対無理だ…!と思っていても降りかかる小課題をコツコツ達成していけば望む地点に到達できます。先生は感性工学とデータ解析の専門家なので、人を効率よく成長させるシステムを作ることも得意に違いありません。(大学院生 S.J.)

私は旭祭(学園祭)での研究室紹介などを通じ、ビデオゲームの表現技法を感性工学の視点から研究したいと思い、配属を志願しました。井ノ上先生のゼミは週に1回行われ、メンバーそれぞれがその日までの進捗を報告し合います。その中で次週までの「最低到達目標」と「上位到達目標」を井ノ上先生と相談しながら設定するため、着実に研究を進めていくことができます。また、メンバーの日常や就活などについても親身になって考えて下さるので、気兼ねなく相談することができます。深く研究したいテーマや実現させたい将来の夢を持ち、新たな技術や知識を身につけることに努力を惜しまない人がこの研究室に向いているのではないかなと個人的には思います。(大学院生 T.T.)

3年次に履修した「インタラクティブメディアとデザイン」の授業を通じてUI/UXと感性工学に興味を持ち、井ノ上先生の指導を希望しました。研究内容については、自分の希望に合った内容を井ノ上先生と一緒に選定して進めていくため、配属時に明確に決まっていなくても問題ありません。毎週のゼミで研究室メンバーにコメントを頂いたり、先輩方の研究の協力をしたりなど、メンバーとの繋がりも強いです。また、研究指導だけでなく、進路や就職活動についても親身に相談に乗って下さったり、技術習得の機会を沢山提供してもらえたりします。研究だけでなく、技術力を高めたい、成長したいと考えている方におすすめの研究室だと思います。(学部生 M.K.)

私はゲームを面白くするための工夫や表現に興味があったため、感性工学の視点からゲームの研究に取り組んでいる井ノ上先生の指導を希望しました。本研究室はアウトプットの機会に恵まれており、着実に成長できる環境が整っています。3年次後期のゼミでは、研究に用いるUnityでの開発に慣れるために、研究室の同期と3Dアクションゲームを制作し、インディーゲームの展示会に出展しました。また、研究だけでなく就職活動に関しても手厚いサポートをして下さり、おかげさまで幼少期からの夢であったゲーム会社から内定を頂くことができました。技術に多少の不安があったとしても、研究分野に興味がある人は、ぜひ門をたたいてみて下さい。(学部生 S.F.)

当研究室希望の諸君へ

研究室指導教員から、受験生および研究室を目指す学生向けへのメッセージです。

感性工学とデータ解析に興味があり、研究に情熱と時間を投資して技術を極めたい成長志向/努力家タイプの人を歓迎します。興味を持ったら、簡単なものでよいので実際に動くプログラムを作ってきて下さい。高校生〜大学1年生であれば先ずは「Processing」でオブジェクト指向プログラミングに挑戦してみましょう。エラーメッセージやマニュアルを読むための英語、CGシミュレーションで必要となる物理の力学、高校で習う数学IIIや大学で習う線形代数などは、よく使うので勉強しておいて下さい。「Unity」でのチーム開発などにもぜひ挑戦してみて下さい。